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性能試験と物性試験

2018年10月22日 横山 裕(東工大教授)

 前回は、性能評価方法の具備すべき用件を述べ、この用件を満たす性能試験方法は、一般に、通常の物性試験方法と比較して複雑になりがちであることを述べました。性能試験方法が複雑になりがちなのは、評価対象のモノが使われているときに実際に受ける負荷を適切にシミュレートする必要があるからです。

床のすべりを例にして説明しましょう。「すべりは摩擦で説明できる」という話をよく耳にします。しかし、これは間違いです。例えば、鉄と氷のように摩擦係数が非常に小さい組み合わせでも、鉄でできたスパイクであれば氷の上をすべらずに歩くことができます。このように、人間が感じる"すべり"は、摩擦以外に、靴底の床へのくい込みや、逆に床の凹凸の靴へのくい込みなどに大きく左右されます。

中学の物理の授業を思い出して下さい。ある板の上にある物体を置き、水平方向に引っ張って摩擦係数を測定する場合、物体の重さや、板と物体の接触面積は、測定結果には影響しないと習ったと思います。影響しないのであれば、試験する人にとって都合のよい重さ,接触面積、あるいは安定した結果が得られる重さ,接触面積で測定すればいいことになります。このような考え方にしたがって試験方法が決まっているのが、物性試験です。しかし、床と靴の場合は、上述のように双方のくい込みなどが影響するため、重さ,接触面積により結果が大きく変動します。

したがって、人間が感じるすべりを適切に測定するためには、靴の上に載せる重りの重さや、床と靴の接触面積などを、実際に人間が動作した時の床と靴の接触状況と同じになるように設定しなければなりません。これが、上述の「実際に受ける負荷を適切にシミュレートする」ということです。性能試験方法は、このようにして決めなければならないので、妥当な試験方法を確立するためには、大変な労力が必要となります。

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